板宿教会現教会堂は1987年、ヴォーリズ社設計、竹中工務店施行により建築されました。当時はまだ新しいオルガンを導入できませんでしたが、将来のパイプオルガン導入を見据えた良質の音響の礼拝室が備えられました。2005年2月に「オルガン委員会」を発足し、ガルニエ・オルガン工房らと懇談を重ねました。
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パイプオルガン建造の経緯
そして2009年9月13日に「3ストップ プルダウン ペダル付きパイプオルガン」購入が決まり、2011年11月22日より教会にてオルガン建造作業が開始され、同年12月5日に完成しました。こうして、板宿教会礼拝堂に調和した音を求めた祈りと献金、またガルニエ工房の協力により、「世界にただ一つのオルガン」ができあがりました。
工房からの説明
音楽的コンセプト
私たちは、少ないストップ数で最大限の効果を達成できるよう、設置場所と環境と音響、また予算などを総合的に検討いたしました。基本的には設置場所が大変重要となります。このプロジェクトは礼拝、会衆讃美歌の伴奏を中心目的に置き、また小さなコンサートも可能であるものを提案することでした。これはドイツバロック風のオルガンで、特に8世紀のオルガン建造家の作品です。このオルガンは最小限のストップで最大限の成果を発揮することができ、パイプの整音を設置場所で行うことにより、楽器に最適な音楽性を作り出すことができます。
ケース
これはオルガンの重要な構成要素のひとつで、内部(風箱、パイプ等)を支えています。ケースの前面と側面にはナラ材を用い、後面はトウヒを用います。それは最良の共鳴を得るためにです。仕上げには天然の蜜蝋を3度塗り磨き上げます。構造はほぞ組み、鏡板など良き伝統的な指物技術を用いてつくられています。前面パイプの上部の透かしは菩提樹を彫り金箔を施してあります。ご参考のために私共の楽器のいくつかの写真をご紹介致します。
パイプ
パイプは適切な合金比と加工法で製作されます。いくつかの低音部のパイプは木製になります。パイプの寸法は会堂の音響と礼拝での会衆讃美伴奏の使用に基づいて算出します。合金比はストップの種類に応じて錫が3%から99%となります。これらの数値は後に設置場所で決定されます。フルー管の口切りは組立て時に設置場所で行います。
キーアクション
鍵盤にはツゲと黒檀が用いられます。ローラーボードは錬鉄と他の部分には木でつくられます。使用される錬鉄は化学溶液に浸け防錆処理がなされます。手鍵盤アクションは吊り下げ式(押し下げ式)となります。トラッカーには年輪の細かいトウヒを用います。
風箱
スプリングチェストでつくられます。私たちはこのタイプの風箱を30年来製作してきましたが、気候の変化の大きい環境、特に日本などで大きな利点があります。それらは良質の針葉樹で製作され、バネはステンレスとイノックスでつくられます。この風箱はケースの支持の上に置かれることによりケースとの効率の良い音響の結合が作り出すことができます。
ストップアクション
トラッカーは鉄、あるいは木でつくられ、メカニック様式です。ストップ回転棒は設計段階で内部の広さに応じて木材で作るか、鉄で作るか決められます。ストップアクションは操作が滑らかで音がしないように配慮してあります。
送風系
適正な大きさの電動送風モーターと木製の送風管からなります。この送風管には風の雑音が抑えられるよう緩衝材が取り付けられています。オルガン内に場所を設け襖形ふいごを設置しています。
整音
整音作業は常に設置場所で行われます。音響を得るため、オクターブごとに基準となるパイプを作り上げ、それをもとにその他のパイプを準備していきます。それらは最良の
音の響きが得られるよう、設置場所にて、まず口でパイプを吹きながら、整音をしていきます。閉管パイプは全て蓋ではんだ付けされます。調律法は全ての調での演奏が可能なプログレッシフで行います。この調律法により、全ての調が各々美しく響き、また楽器の音楽性を支えます。